「柔軟体操をすると身体が柔らかくなるの?」、「何のために柔軟体操をするの?」など、目的や効果を理解しないまま、なんとなく柔軟体操をしていませんか?
「運動前や後に柔軟体操をしなさい」といわれたはず。そもそも、なんで柔軟体操をするのかわかっていない人も多いのではないでしょうか。
当記事では今回、運動前と後になぜ柔軟体操をするのか、メリットと効果を解説します。
柔軟体操の目的
柔軟体操(ストレッチ)は、自ら伸びることのない筋肉を伸ばし、関節の可動域を広げることを目的としています。
筋肉は骨にくっついており、身体の中心に近い筋肉の始まりを「起始(きし)」、遠い側を「停止(ていし)」といいます
例えば力こぶを作る上腕二頭筋は、長頭(ちょうとう)と短頭(たんとう)の2頭に分かれています。
長頭の起始は肩甲骨の関節上結節、短頭は肩甲骨の烏口突起(うこうとっき)の先端にあります。2つの筋肉は肩関節と肘関節をまたいで、前腕部にある橈骨粗面(とうこつそめん)で停止となるんです。
長頭と短頭が作用することで、肘や肩を曲げることが可能。
柔軟体操は、筋肉の起始と停止を遠ざけて伸ばすことを目的に行います。
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柔軟体操の種類と効果
柔軟体操といえば床に座って足を伸ばすなどの動きを想像する人も多いはず。ですが、柔軟体操には以下のように様々な種類があるんです。
- スタティックストレッチ
- ダイナミックストレッチ
- PNF
- アクティブストレッチ
- コンプレッションストレッチ
- パートナーストレッチ
スタティックストレッチ(静的ストレッチ)
勢いをつけずに時間をかけて筋肉を伸ばす柔軟体操。一般的にストレッチや柔軟体操といえば、静的ストレッチのことをいいます。
床に座って両足を開き、胸を床につける開脚などが代表的。静的ストレッチを行うことで、運動後に緊張している筋肉を緩めるのが可能。
また、副交感神経を優位にし、身体をリラックスした状態にしてくれるんです。血流を良くすることで高い効果が期待できるため、運動後のクールダウンや入浴後に行うのがおすすめ。
ただし、運動や筋トレ前にスタティックストレッチを行うのはNG。筋肉が緩んでしまい、力が入らなくなってしまうといわれているんです。
ダンベルやバーベルを扱うのに力が入らないと、筋トレの効果が損なわれるだけでなく、怪我のリスクも高くなります。
ダイナミックストレッチ(動的ストレッチ)
筋トレや運動を始める前に行うなら、身体を動かしながら筋肉や関節、腱を伸ばすダイナミックストレッチがおすすめです。
代表的なダイナミックストレッチに、ラジオ体操やブラジル体操があります。
交感神経を優位にし、体温を高めて関節をスムーズに動かせる状態、つまり「動ける身体」にするのがダイナミックストレッチの目的です。
PNF
PNFは「Proprioceptive Neuromuscular Facilitation(固有受容性神経筋促通法)」の略。
元々はリハビリテーションで取り入れられていた、ペアで行う柔軟体操。PNFには「ホールド・リラックス」と「コントラクトリラックス」といった手法があります。
筋肉に強い収縮をかけた後に弛緩することで、脳の神経を刺激。短時間で筋肉の緊張を緩めたり、関節の可動域を広げる効果が期待できます。
しかし、「PNF後は筋トレのパフォーマンスが落ちる」という研究結果も出ているため、運動や筋トレ前に行うのはおすすめしません。
PNFは、ゴムバンドやタオルを使うことで一人でも行うことは可能。ペアで行う場合、パートナーに正しい知識がないと怪我をする恐れがあるので要注意です。
アクティブストレッチ
ダイナミックストレッチのように、身体を動かしながら行います。伸ばす筋肉と反対にある筋を収縮させることが目的。
体温の上昇や筋肉・関節の動きをスムーズにする効果が期待。筋トレや運動前にピッタリな柔軟体操です。
ダイナミックストレッチよりも動きは小さいので、筋トレ初心者でも簡単に行えます。
コンプレッションストレッチ
部位を圧迫することで伸ばすのが「コンプレッションストレッチ」です。
スタティックストレッチで伸ばした筋肉を、ボールや手など使って圧迫。すると、ただストレッチをするよりも、さらに筋肉を伸ばすことが可能。
最近では筋膜リリースでも似たような方法が利用されています。ボールやポールがない場合は、硬めの缶やペットボトルなどでも代用できます。
パートナーストレッチ
パートナーにストレッチの補助をしてもらうのが「パートナーストレッチ」です。
学生時代、体育の授業などで開脚ストレッチを行う際、後ろから押してもらった経験はありませんか?
自分一人では伸ばすのが難しい部位を、パートナーに押してもらうなど補助を受けながら行います。
他動的なストレッチなので、パートナーに知識や技術があれば、リラックス効果も期待できるんです。
補助をしてくれる人に正しい知識がないと、相手に怪我を負わせる恐れがあるので要注意。
柔軟体操で得られるメリット
柔軟体操をすることで、以下のような効果が得られます。
- 怪我を予防する
- 筋肉の疲労を回復する
- リラックス効果が得られる
- 柔軟性を高め関節の可動域を広げる
1.怪我を予防する
柔軟体操をすることで、捻挫や肉離れなど怪我を予防する効果が見込めます。関節の可動域が狭かったり、筋肉が硬いと思うように動くことができません。結果、足をくじいたり腰を痛めることも。
スポーツや筋トレをする前はダイナミックストレッチ(動的ストレッチ)を行うことで、関節の可動域が広がりスムーズに動くことが可能。
交感神経も優位になり、血流が良くなって体温も高くなります。身体を動かすのに適したコンディションになるので、パフォーマンスの向上にも繋がります。
ただし、スタティックストレッチ(静的ストレッチ)を運動前に行うと、筋肉が緩んで力が出なくなることも。
パフォーマンスの低下も起きてしまうため、怪我をするリスクが高まります。
2.筋肉の疲労を回復する
運動や筋トレ後は、筋肉が興奮状態にあります。スタティックストレッチ(静的ストレッチ)を行うことで、筋肉を落ち着かせ、硬くなった筋肉を柔らかくします。
入浴後や運動後にスタティックストレッチを行うことで、血流が良くなります。体内の老廃物も効率的に排出するので、高い疲労回復効果が期待できます。
3.リラックス効果が得られる
スタティックストレッチは副交感神経を優位にし、リラックスする効果が期待できます。
仕事や運動など、日中に活動すると交感神経が優位になっています。活動的になる反面、常に緊張している状態にあるのでストレスが溜まることも…。
対して夜は副交感神経が優位になり、睡眠に適したリラックス状態になるんです。
運動後にスタティックストレッチを行うことで、副交感神経が優位になりリラックスしやすくなるでしょう。
4.柔軟性を高め関節の可動域を広げる
柔軟体操を行う目的であり、最大のメリットといえるでしょう。
柔軟体操をすることで、筋肉の柔軟性を高め、関節の可動域を広げることが可能。
スポーツ選手に柔軟性は必要不可欠。自分のパフォーマンスを最大限に発揮し、怪我を未然に防ぐことに繋がるためです。
筋トレでも望んだ部位にしっかりと負荷がかけられます。
柔軟体操のメリットを理解して正しく行おう!
柔軟体操をする目的やメリット、効果を理解して行いましょう。怪我の予防や疲れを残さないだけでなく、より良い結果を出すことが可能。
特に注意したいのが、スタティックストレッチとダイナミックストレッチを行うタイミングです。
- 運動前は交感神経を優位にし、運動に適した状態を作るダイナミックストレッチ。
- 運動後は副交感神経を優位にし、リラックス効果などが得られるスタティックストレッチ。
以上のことをしっかりと理解し、正しいタイミングで柔軟体操を行いましょう。